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ビルクリーニング オンライン

2013.04.17

カーペットフロア、そのプロフェッショナルなメンテナンスとは

カーペット先進国アメリカの清掃管理システムに学ぶ

日時 2013年4月17日(水)13:30 ~ 17:00
※13:00 より受付開始
会場 ビルメンテナンス会館302
(東京都荒川区・JR西日暮里駅より徒歩3分)
参加費 購読者…無料
非購読者…7,500円
定員 60名(1社5名様まで)

いまや日本の非住居用ビルの床材は、カーペットが7割以上を占めます。本来なら清掃業務は標準化され、顧客が納得する適切な維持管理ができて当然のはず。ところが実際の現場は、しみや歩行動線で汚れた見苦しいカーペットが少なくありません。一方、米国を訪れる人は一様に、カーペットが常にきれいな状態で維持されていることに驚きます。日本と米国のこの違いはどこにあるのでしょうか。米国のメンテナンス&クリーニングを熟知したお二人に、米国の考え方や手法、教育システムを紹介してもらい、プロとして誇れる管理のあり方をご提案いただきます。

13:30 第1講座 「日本と米国、カーペットクリーニングに見られる違いと課題」
(有)カーペットドクター代表 IICRC認定インストラクター 高野 毅
アメリカ式の技術を基礎から学び日本で実践。日本の業界に感じる違和感。それはクリーニングは科学だという認識が欠けているからではないか。科学的に正しい方法でカーペットにアプローチすることで、いかに多くのメリットがあるかをお伝えします。
15:00 第2講座 「カーペットの日常清掃&レストレーションの違いと教育の重要性」
㈱S.M.S.Japan代表取締役 尾上武樹
メンテナンスを科学的に捉えれば、プロフェッショナルとジャニトリアルの役割の違いがわかり、適した資機材とそれを正しく使う教育の重要性にも気づきます。われわれの仕事がビルの資産価値に通じるようなメンテナンスのあり方を考えます。

セミナーリポート

日本と米国、カーペットクリーニングに見られる違いと課題

(有)カーペットドクター代表 IICRC認定インストラクター 高野 毅

技術者は誇りをもって仕事を行っている

義父が日本在住の外国人住宅のカーペットクリーニングを行っていたことがきっかけで、私は15~16年前にこの仕事を始めました。そのころすでに米国のクリーニング技法は確立しており、私は米国式のやり方が当たり前だと思っていました。今回、日本と米国の違いということでお話ししますが、どちらが正しいということではありません。良いところを吸収し、自分たちの良いところを再発見していただければと思います。 多くの方のお話を聞くと、日本では実際の作業と営業が分かれているようです。米国ではカーペットクリーニング技術者は独立した専門職として営業から作業まで行います。カーペット以外の床や窓、換気扇などの清掃は行いません。専門家としてプライドをもって仕事をしており、社会的にも普通の人にはできない仕事だとみなされています。

例えば写真のような車で作業に行きます。大きな文字を載せるのは仕事に自信がある証拠です。良い仕事ができなければ逆効果になりますから。 そのためには、正しい知識と良い製品、それに経験がそろっていなければなりません。
ただ経験があるだけではだめです。知識があってもそれが正確でなければなりませんし、知識を活用する方法も身につけておく必要があります。しかし、私が最大の違いと感じているのは、クリーニングを科学として捉えているかどうかです

クリーニングはサイエンスです

クリーニング=サイエンス。良い仕事を求める人はそれがわかっています。またそうした知識をもたない人には重要な仕事は任せることはできません。

また、発注する側もきちんとした知識をもっていないと、きちんとした結果につながりません。なぜなら、適切な業者を見分けられないからです。
"クリーニングが科学"であれば、証拠に基づいていなければ成り立ちません。実際にきれいになっているかどうか、見た目だけでなく衛生的な環境がつくりだせているのかどうかということも重要です。
そうした科学的なクリーニングを実施するために、米国ではカーペットのクリーニング業者や施工業者、製造業者、消費者たちによって組織されたIICRCやCRIなどの中立的な団体が、技術や教育に関する標準を定めています。もしそのような団体がなかったら、先輩がこう教えてくれたから、お客様がこう言っていたから、というアプローチになってしまいます。そのためこれらの機関の講習会に参加し、正しい知識を身につけるということは非常に大切です。

IICRCの名称は、インスペクション(検査)・クリーニング・レストレーション(復元)などの頭文字をとったものです。基準に基づいて中立な立場で検査しますので、トラブルの原因を公正に判定することができます。
そうした中立的な団体だけでなく、米国では国の機関も関与しています。EPA(米国環境保護局)は室内の空気環境の指針を出していますが、その1つの重要な要素として、カーペットの状態というものがあります。カーペットはパイル内に汚れを溜め込む構造ですが、これが適切に取り除かれないと歩行のたびに空気中にほこりを舞い上げてしまいます。そのためどのレベルでメンテナンスしたほうがよいのか(清掃頻度)の指針をEPAは出しているのです。

IICRCで学ぶこと

IICRCでどのようなことを学ぶのか、少しだけ紹介します。例えば、「このカーペットは汚い」などと言いますが、そもそも汚れとは何でしょう。それはカーペットという構造(パイルやバッキングなど)に外部から入ってくる"望まれないもの"と定義します。

ではクリーニングとは何か。カーペットが本来もっている機能、形状、風合いなどを損なわずにそれらを除去することとです。簡単そうですが、じつは奥が深いものです。

一口にカーペットと言っても、いろいろ分類があります。繊維にもいろいろ種類があり、それを理解しなければ、やってよいこととやってはいけないことがわかりません。
カーペットは7~8割がドライな汚れと言われています。それを掃除機できちんと除去できれば、仕事の7~8割が完了したようなものです。それ以外のウエットな汚れを除去するために、じつは労力の8割が必要なのです。ですからいきなり濡らして作業をするのは、取りにくい汚れをわざわざ自分でつくりだしてしまうことになります。最初にドライな汚れをきちんと除去するのは理にかなっているのです。

科学的にアプローチするメリット

最後に科学的にアプローチするメリットをまとめます。

(1)各メーカーからの多くの情報に混乱しない

きちんと知識をもっていれば、何が良いもので何がいけないものか自分で判断することができます。

(2)資源の有効活用

人・モノ・金のムダがなくなります。例えば、メンテナンスのプログラムができていれば、不要なクリーニングをする必要がなくなります。

(3)営業力のアップ

さきほどのEPAの指針などを示せれば、客観的な根拠に基づいた作業内容を自信を持って提案することができます。

(4)現場技術力の向上

そして、本当にカーペットがきれいになります。同時に、事故が減り、安定した結果が生まれます。人によって対応が異なるということも起こりません。

(5)高いモラルの共有

従業員のモチベーションも上がります。自分のやる作業の意味がわかるわけですから元気も出ます。
そうすると、安定して品質の良いクリーニングができますので、お客様の満足度も高くなります。そうなると、もう価格ではなく、信頼によって選ばれることになります。

セミナーリポート

日常清掃とレストレーションの違いと教育の重要性

(株)S.M.S.Japan代表取締役 尾上武樹

われわれは毎年620k㎡の仕事を失っている

私は2000年まで米国にいて、日本に資機材を輸出する仕事をしていました。米国の事情は詳しいのですが、日本がどういう状況なのか帰国当初はわかりませんでした。その後、いろいろと情報をいただき、集大成として本日のテキストの『カーペットクリーニングマニュアル』を作成しました。

日常清掃とレストレーションの差ですが、米国では別ものとして捉えられています。日常管理とは、汚れないように日常的に手を入れる作業です。一方、レストレーション・クリーニングとは、汚れたものを復元する作業です。日常管理とレストレーションをしっかり組み合わせていけば、高いレベルでカーペットを維持管理できます。

残念ながら、日常管理だけをしていても、美観や状態は落ちていくだけです。昨今のようにクリーニングの間隔が延びるとどうしようもありません。単価は下がる。プロの手も入れられず、悪い方へ回っていく。この悪循環をなんとかしなければなりません。その点、米国のカーペットは本当にきれいです。色あざやかなカーペットがきれいに管理されています。
こうした日米の違いは文化の違いでもあります。日本は障子、畳、襖の張り替えの文化です。張り替えに抵抗がありません。張り替えになるとみなさんの仕事に直結します。それでいながら、タイルカーペットはリサイクルできるからエコだと言われます。しかし、実際には毎年620k㎡分が廃棄されています。これは東京23区とほぼ同じ広さです。裏返せば、われわれはその面積分の仕事を毎年失っているのです。

日常管理とレストレーションによる管理計画

米国では、プロフェッショナルとジャニトリアル(日常管理)、コンシューマー(一般消費者)が明確に分かれており、提供される資機材も異なります。日本のメーカーの多くはジャニトリアル用の製品を主に取り扱われ、ビルメンさんも定期清掃から窓拭きまで何でもされます。高野さんのようなカーペット専門のプロはほとんどいないようです。

日常管理で重要なのは、汚れがつく前に手を入れる「予防メンテナンス」です。そのための絶対条件が、毎日アップライトバキュームをかけること。それをしながら3か月ごとに表面洗浄をして、きれいさがキープできる。汚れがガチガチに入ったカーペットをジャニトリアル用のケミカルで作業しても、きれいになるはずがないのです。

一例として、米国の某ビルでは次のような管理計画です。

●ジャニトリアル:除塵作業(アップライト)=1日2回(ゾーニングで部分的に頻度の調整を行う)。しみ取り作業(スポッター)=毎日。中間清掃(表面の汚れ除去)=隔月。
●プロフェッショナル:レストレーション・クリーニング(トラックマウント)+染色されたしみ取り=年3回。

このメンテナンス計画は、相当お金がかかります。しかしこれを何年も維持できれば、張り替え分の費用でまかなえるのです。これが私たちの仕事です。これが行き届いているので、米国のカーペットはきれいに管理されているのです。

クリーニングの正確な知識を身に付ける

『マニュアル』に「クリーニングの知識」を整理しました。各工法ごとに日米の比較と改善例を示しています。 使用する資機材は日米でそれほど変わりません。ここで強調したいのは、ケミカルはどんどん進化しているということです。ですからケミカルを変えるだけで、現在のやり方でもかなり改善されることがあります。

日本の場合、知っておくべきことはアスファルトが多いことです。そのためカーペットの歩行ラインには油汚れが多いです。逆に歩行ラインがなければ油汚れは比較的少ない。それを頭に入れながら日常と中間作業を組み立てます。大事なのは、汚れを堆積させない管理です。

クリーニングの代表的な理論にCHAT理論があります。C(ケミカル)、H(時間)、A(摩擦力:アジテーション)、T(時間)の4つの要素の組み合わせです。時間がなければCとAを増やす。お湯が使えなければ時間をかけるなど、現場の状況に応じて調整します。

次にリンサーですが、そもそもこれは2ステップ工法のすすぎを行うための機械です。レストレーションで使うものはポータブル・エクストラクターといって、汚れを回収するための機械です。両者にはスペックの違いがあり、私はわかりやすく前者を「弱リンサー」、後者を「強リンサー」と呼んでいます。弱リンサーは水量が出せないのでレストレーションには向きません。

ここで大事なのは、タイルカーペット1㎡につき60秒かけてウォンドを引くことです。現状では、20秒程度の方が多いようです。ある機種(強リンサー)の吐水量は毎分3.3Lですので、20秒では1㎡あたり1.1Lしか水を使わないことになります。これでは根こそぎ洗浄はできません。汚れを回収できず、残留洗剤を残してしまう原因がこれです。

最後にトラブル事例についてです。日本にはインスペクターがいないので、カーペットに何かトラブルが起きると、われわれの責任にされがちです。しかし、製造や施工によるものなど、トラブルには外的要因もあります。例えばフィルトレーションソイルは、部屋の隅やドアの下が浮遊粉塵で黒く汚れる現象です。ところが、これを錆と勘違いして錆取り剤で固着させてしまうとクリーニングの責任となります。
現場でよく見られる浮きじみは、パイルの奥に残った汚れが毛細管現象で浮き出てくる現象です。乾燥に時間がかかると起こる現象です。乾燥が早ければ起こらないと知れば、ウォンドのドライパスを複数かける重要性も理解できます。
クリーニングの正確な知識を身に付けることが大切です。一方で、バキュームをかけると、テナントの従業員の方からうるさいと言われて作業ができないという現実もあります。こうした意識を変えていく取り組みが必要ではないかと思います。

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